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口腔機能低下症第2回~噛む力(咬合力)の低下が全身に与える影響~

最近噛みにくくなっていませんか?

「以前は普通に食べられていたお肉が噛みにくくなった」

「せんべいやたくあんなど硬いものを避けるようになった」

「食事に時間がかかるようになった」

「歳のせいだから仕方ないと思っている」

このような変化はありませんか?

年齢を重ねると、足腰の筋力が低下するように、お口の筋力や噛む力も少しずつ低下していきます。

しかし、多くの方は噛む力の低下を自覚しにくく、「食べられているから大丈夫」と考えがちです。

実は、噛む力の低下は単なるお口の問題ではありません。

噛む力が低下すると、食事内容の変化や栄養不足を引き起こし、全身の筋力低下や健康寿命の短縮にもつながることが分かっています。

今回は、「噛む力(咬合力)」について詳しく解説します。

 

〇咬合力(こうごうりょく)とは?

咬合力とは、歯で噛みしめる力のことをいいます。

普段あまり意識することはありませんが、

  • 食事をする
  • 飲み込む
  • 発音する

といった日常生活に欠かせない機能です。

健康な成人では、奥歯で強く噛んだ時に数十キログラム以上の力が発生するといわれています。

この力によって、食べ物を細かく砕き、飲み込みやすい状態にしています。

 

〇噛む力は年齢とともに低下する

年齢を重ねると、

  • 歯を失う
  • 歯周病が進行する
  • 入れ歯になる
  • 顎の筋肉が衰える

などの理由から咬合力は徐々に低下していきます。

特に50歳を過ぎる頃から少しずつ変化が現れ始める方が多く、70歳以降では若い頃の半分程度まで低下するケースもあります。

 

〇噛む力が低下するとどうなる?

食べられるものが減る

最も分かりやすい変化です。噛む力が低下すると、

  • 肉類
  • 生野菜
  • たくあん
  • ナッツ類
  • せんべい

などが食べにくくなります。すると自然に、

  • パン
  • 麺類
  • おかゆ
  • やわらかいおかず

を選ぶようになります。

一見問題ないように見えますが、これが栄養バランスの乱れにつながります。

タンパク質不足になる

噛みにくい食品の代表が肉や魚です。これらには筋肉を作るために必要なタンパク質が豊富に含まれています。

噛みにくさから摂取量が減ると、

  • 筋力低下
  • 体力低下
  • 疲れやすさ

につながります。

フレイルの原因になる

近年注目されている「フレイル」とは、健康な状態と要介護状態の中間にあたる虚弱状態のことです。

噛む力の低下によって食事量が減少すると、

  • 低栄養
  • 筋肉量減少
  • 活動量低下

が起こりやすくなります。つまり、噛む力の低下はフレイルの入り口になるのです。

認知機能にも影響する可能性

近年の研究では、噛むことが脳への刺激になることが分かっています。

しっかり噛むことで、

  • 脳の血流が増える
  • 神経活動が活発になる

と考えられています。そのため、噛む力の低下が認知機能低下のリスクと関連している可能性が指摘されています。

 

〇自分では気付きにくい噛む力の低下

怖いのは、噛む力の低下は徐々に進行するため、自分では気付きにくいことです。

例えば、「昔より食べる量が減った」「最近硬いものを食べていない」

と思っていても、本人は不便を感じていない場合があります。

しかし実際には、噛める食品の種類が減っていることがあります。

 

〇こんな症状はありませんか?

以下に当てはまる方は咬合力低下の可能性があります。

□ 硬いものを避けるようになった

□ 食事時間が長くなった

□ 肉をあまり食べなくなった

□ 入れ歯で噛みにくい

□ 歯がグラグラする

□ 食事量が減った

□ 体重が減少している

□ よく食べこぼす

□ 最近疲れやすい

複数当てはまる場合は一度検査をおすすめします。

 

〇咬合力低下の原因

歯の本数の減少

歯を失うと当然ながら噛む力は低下します。特に奥歯の喪失は大きな影響があります。

歯周病

歯周病によって歯を支える骨が減少すると、十分な力で噛めなくなります。

入れ歯の不適合

入れ歯が合っていないと、十分な咬合力を発揮できません。

顎の筋力低下

加齢によって咀嚼筋(噛む筋肉)も衰えます。

 

当院で行う咬合圧検査

当院では、咬合圧検査(噛む力の検査)を実施しています。

咬合圧検査では、現在どれくらいの力で噛めているかを数値化できます。

患者さまからは、「思ったより噛めていなかった」「自覚がなかった」

という声も少なくありません。

数値で確認することで、今のお口の状態を客観的に把握できます。

 

〇咬合力が低下していても改善できる?

早期であれば改善や進行予防が期待できます。

1.歯周病治療

歯を支える環境を整えます。

2.入れ歯の調整

合わない入れ歯を改善することで咬合力が向上する場合があります。

3.被せ物や噛み合わせの調整

噛みやすい環境を整えます。

4.咀嚼習慣の改善

しっかり噛む習慣を身につけることも重要です。

 

〇よく噛むことのメリット

噛むことは食事だけではありません。

  • 消化を助ける
  • 唾液分泌を促す
  • 虫歯予防
  • 脳への刺激
  • 誤嚥予防

など多くのメリットがあります。「よく噛んで食べること」が健康寿命を延ばす第一歩ともいわれています。

 

〇50歳を過ぎたら咬合力のチェックを

高血圧や血糖値を測定するように、これからは「噛む力」を確認する時代です。

特に50歳を過ぎると少しずつ変化が始まります。症状が出てからではなく、症状が軽いうちに確認することが大切です。

 

〇当院での取り組み

当院では、口腔機能低下症の評価として、咬合圧検査(噛む力の検査)を実施しています。また、

  • 歯周病治療
  • 入れ歯調整
  • 噛み合わせの確認
  • 定期メンテナンス

を通じて、患者さまの噛む力の維持・改善をサポートしています。

〇まとめ

噛む力(咬合力)の低下は、単なる加齢現象ではなく、

  • 栄養不足
  • フレイル
  • 筋力低下
  • 健康寿命の短縮

につながる重要なサインです。

「最近噛みにくい」「硬いものを避けている」という方は、お口の機能が低下し始めている可能性があります。

当院では咬合圧検査を行い、現在の噛む力を数値で評価しています。

将来もご自身の口でしっかり食事を楽しむために、一度お口の機能を確認してみませんか?

次回の第3回では、「唾液量低下が引き起こすお口のトラブル」について詳しく解説します。

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