むし歯治療・予防歯ぎしり歯周病歯科コラム
歯の痛みの原因|「しみる」「ズキズキ」「噛むと痛い」…その裏にあるもの
突然、歯が痛くなると不安になりますよね。しかも歯の痛みは、「ズキズキ脈打つように痛む」「冷たい水でキーンとしみる」「噛んだ瞬間だけ刺すように痛い」など、感じ方が人によっても状況によっても違います。
実はこの“痛み方の違い”は、原因を推測する大きなヒントになります。歯の痛みは、単なる不快感ではなく、体が「ここにトラブルがあるよ」と知らせてくれるサイン。原因によって、放置してよいものと、急いで治療すべきものがはっきり分かれます。
この記事では、歯の痛みを引き起こす代表的な原因を、痛み方の特徴とあわせて分かりやすく整理します。「今の痛みは何が原因っぽいのか」「受診は急ぐべきか」「受診まで何をすればよいか」まで見通せるように解説していきます。

- まず知っておきたい:歯の痛みのタイプ別サイン
歯の痛みは、ざっくり言うと「刺激があると痛い」「何もしなくても痛い」「噛むと痛い」の3系統に分けると理解しやすいです。
- 冷たい・熱いものでしみる(刺激痛)
初期のむし歯や知覚過敏で多いタイプ。痛みが短時間で引くなら軽めのこともありますが、長く続く場合は要注意です。 - 何もしなくてもズキズキ痛む(自発痛)
歯の神経(歯髄)が強く炎症を起こしている可能性があります。夜に悪化したり、脈打つように痛んだりすることが多く、放置すると悪化しやすいです。 - 噛むと痛い(咬合痛)
むし歯の進行、歯の根の先の炎症、歯のヒビ、噛み合わせの不具合などが候補になります。「特定の歯だけ痛い」「特定の噛み方で痛い」は見分けのヒント。 - じんわり重い・違和感(鈍痛)
歯周病や噛みしめによる負担、歯の根の慢性的な炎症などで起こりやすいタイプです。 - 歯が悪い気がするのに原因が別(関連痛)
たとえば副鼻腔炎(鼻の奥の炎症)で上の奥歯が痛く感じたり、顎の筋肉の疲労で歯が痛いように感じたりすることがあります。
ここまでで「痛みの分類」ができたら、次からは原因別に掘り下げます。
- 原因①:むし歯(虫歯)
歯の痛みの原因として最も有名なのがむし歯です。ただし、むし歯は進行段階によって痛み方が変わるのが特徴です。
- 初期(エナメル質)
表面が溶け始めた段階では、痛みが出ないことも多いです。自覚症状が少ないため放置されやすいのが落とし穴。 - 中等度(象牙質まで進行)
冷たいものや甘いものがしみるようになります。これは、エナメル質の下にある象牙質(ぞうげしつ:神経に近い層)まで細菌の影響が及び、刺激が伝わりやすくなるためです。
この段階なら、削る量が少なく済む可能性も高いです。 - 重度(神経に到達)
むし歯が歯の神経(歯髄)まで達すると、ズキズキした強い痛みが出やすくなります。特に夜間に痛くなることがあり、これは横になると血流の影響で圧が高まり、痛みを感じやすくなるためです。
この段階では、神経の治療(根管治療)が必要になることがあります。
さらに放置すると、神経が壊死して一時的に痛みが消えることがあります。しかしこれは「治った」のではなく、痛みを感じる神経がダメになっただけ。根の先に膿がたまるなど、別の形で悪化しやすいので要注意です。
- 原因②:歯の神経の炎症(歯髄炎)
「歯髄炎(しずいえん)」は、歯の中の神経や血管が詰まっている組織(歯髄)が炎症を起こした状態です。原因の多くはむし歯ですが、強い衝撃や歯のヒビ、過去の治療の影響で起こることもあります。
歯髄炎の分かりやすい特徴は次の通りです。
- 何もしなくてもズキズキする
- 冷たいものがしみて、痛みがしばらく続く
- 進行すると熱いものでも痛む
- 夜に痛みが増しやすい
- 痛み止めが切れると一気にぶり返す
特に重要なのが「しみた後、痛みが長引くかどうか」です。知覚過敏は“キーン→すぐ引く”が多い一方、歯髄炎は“しみる→じわじわ続く→ズキズキ”となりやすいです。
歯髄炎は、放置して自然に良くなることはあまり期待できません。炎症が強い場合は神経を取る治療が必要になることもあるため、「ズキズキ系」「夜に悪化」「痛みが持続」は早めの受診が安心です。
- 原因③:歯周病・歯ぐきの炎症
「歯が痛い」と感じていても、実は歯そのものではなく歯ぐき(歯周組織)が原因になっていることがあります。代表が歯周病です。
歯周病は、歯と歯ぐきの境目にたまったプラーク(歯垢)内の細菌が引き起こす炎症で、進行すると歯を支える骨(歯槽骨)まで溶かしてしまう病気です。初期は痛みが少ない一方で、進んでくると次のような症状が出やすくなります。
- 歯ぐきが腫れる、押すと痛い
- 歯みがきで出血する
- 口臭が強くなる
- 歯が浮いたように感じる、グラつく
- 噛むと違和感がある、鈍い痛みがある
特に痛みが強くなるケースが、歯周膿瘍(ししゅうのうよう)と呼ばれる状態です。これは歯周ポケットの奥に膿がたまり、急に腫れてズキズキ痛んだり、噛むと響いたりします。頬が腫れてきたり、膿が出たりすることもあります。
歯周病由来の痛みは「歯がズキズキ」というより、歯ぐきがドクドク腫れて痛い、触ると痛い、噛むと重いといった感覚になりやすいのが特徴です。
- 原因④:歯のヒビ・破折(クラックトゥース)
意外と見落とされやすいのが、歯に入った小さなヒビ(クラック)です。見た目で分からないことも多く、「むし歯じゃないのに噛むと痛い」タイプの代表例です。
よくある痛み方はこんな感じです。
- 噛んだ瞬間に「ピキッ」「ズキン」と鋭く痛む
- 噛むのをやめた瞬間(離す時)に痛い
- 特定の角度や、特定の食べ物でだけ痛む
- 冷たいものでしみることがある
ヒビが入る原因は、硬いもの(氷、ナッツ、せんべい等)を強く噛むことだけではありません。歯ぎしり・食いしばりで長期的に負担がかかって起こることも多いです。詰め物が大きい歯や、神経を取った歯は割れやすくなります。
放置すると、ヒビから細菌が入り、神経の炎症につながったり、割れ方によっては抜歯が必要になることもあります。
「噛むと刺すように痛い」「歯が割れた記憶はないのに急に痛い」は、早めに歯科で相談した方が安全です。
- 原因⑤:知覚過敏
冷たい水、冷たい風、歯ブラシが当たった時にキーンとしみるのが知覚過敏です。専門的には「象牙質知覚過敏」と呼ばれます。
歯の表面のエナメル質が薄くなったり、歯ぐきが下がったりすると、象牙質が露出します。象牙質には細い管(象牙細管)があり、そこに刺激が伝わることでしみるのが仕組みです。
知覚過敏の特徴は以下です。
- 痛みは鋭いが、持続時間が短い(数秒で引くことが多い)
- 冷たいもの・風・歯ブラシで起こりやすい
- 日によって波がある
原因として多いのは、
- ゴシゴシ強いブラッシング
- 歯ぎしり・食いしばりで歯が削れる(咬耗)
- 歯周病などで歯ぐきが下がる
- 酸性の飲食(炭酸、柑橘、スポドリ等)で歯が溶けやすくなる(酸蝕)
対策は、まず刺激を減らすこと。知覚過敏用の歯みがき剤を使い、柔らかめの歯ブラシで力を抜いて磨くだけでも改善することがあります。歯科では、露出部をコーティングする処置や、噛みしめ対策(マウスピース)などを組み合わせることもあります。
ただし注意点として、知覚過敏だと思っていたらむし歯やヒビだったということがよくあります。しみ方が強くなってきた、持続する、噛むと痛い…が混ざってきた場合は、自己判断せずチェックがおすすめです。
- 原因⑥:親知らず・生え方の問題
親知らず(第三大臼歯)は、生え方がまっすぐでないことが多く、歯の痛みや腫れの原因になりやすい存在です。
特に起こりやすいのが、智歯周囲炎(ちししゅういえん)。親知らずが半分だけ出ていたり、歯ぐきに埋まっていたりすると、歯と歯ぐきの隙間に汚れがたまり、細菌が増えて炎症を起こします。
よくある症状は、
- 奥歯のあたりの歯ぐきが腫れて痛い
- 口が開けにくい(開口障害)
- 飲み込むと痛い、喉の奥が痛い感じ
- 耳の近くやこめかみまで痛む(関連痛っぽく広がる)
親知らずの炎症は、疲れや寝不足で免疫が落ちた時にぶり返しやすいのも特徴です。抗生剤や洗浄で一旦落ち着いても、繰り返す場合は抜歯を検討することになります(生え方・神経や骨との位置関係で判断)。
- 原因⑦:噛み合わせ・歯ぎしり・食いしばり
歯は「むし歯や歯周病だけで痛くなる」と思われがちですが、実は**力(負担)**が原因で痛むことも少なくありません。代表が歯ぎしり・食いしばり、そして噛み合わせの乱れです。
よくあるサインは次の通りです。
- 朝起きた時に歯が痛い/しみる
- 顎がだるい、こめかみが重い
- 詰め物がよく取れる・欠ける
- 歯がすり減って平らになっている
- 歯に細かいヒビが入りやすい
歯ぎしりや食いしばりは、寝ている間だけでなく、日中の集中時(PC作業、運転、家事)に無意識で起きることもあります。歯は本来、食事の時に短時間だけ強い力がかかる構造です。長時間の圧が続くと、歯の根元や周囲の組織に炎症が起き、「噛むと痛い」「浮いた感じがする」などの症状につながります。
対策として有効なのが、歯科で作るナイトガード(就寝用マウスピース)。歯への直接ダメージを減らし、顎の負担も軽くできます。また、噛み合わせが原因の場合は、詰め物・被せ物の高さ調整などで改善するケースもあります。
- 原因⑧:治療後の痛み(詰め物・被せ物・根の治療)
治療をしたばかりなのに「痛い」「しみる」となると心配になりますよね。治療後の痛みは、一時的に起こることもあれば、調整や再治療が必要なサインの場合もあります。
よくある「様子見でよいことが多い」ケース
- 削った直後のしみ
むし歯を削ると、歯が刺激に敏感になり、数日〜1、2週間ほどしみやすくなることがあります(程度には個人差)。 - 詰め物・被せ物を入れた直後の違和感
噛み慣れない感覚が一時的に出ることがあります。
受診したほうがいいサイン
- 噛むと痛い(高い感じがする)
詰め物や被せ物がわずかに高いと、噛むたびにその歯だけ強く当たり、痛みや炎症が出ます。これは調整で改善することが多いです。 - 痛みが日ごとに強くなる/長引く
- 腫れ、膿、発熱がある
- 根の治療後にズキズキが増す
とくに根管治療(歯の根の治療)の後は、治療刺激で一時的に違和感が出ることもありますが、強い痛みや腫れが出る場合は早めに相談が安心です。
- 歯じゃないのに歯が痛い?(関連痛)
「どの歯が痛いのか分からない」「歯医者で見ても原因がはっきりしない」——そんなときに疑われるのが関連痛です。関連痛とは、原因が別の場所にあるのに、歯が痛いように感じる現象です。
代表例は次の3つです。
① 副鼻腔炎(ふくびくうえん)
上の奥歯の根の近くには副鼻腔(上顎洞)があり、ここが炎症を起こすと上の奥歯がズーンと痛むように感じることがあります。
鼻づまり、黄色い鼻水、頭重感、頬の圧痛などがあれば可能性が上がります。
② 顎関節症・筋肉の痛み
顎の関節や咀嚼筋(噛む筋肉)が疲労すると、奥歯全体が痛いように感じたり、噛むと違和感が出たりします。
「口を開けるとカクカク鳴る」「開けにくい」「顎がだるい」がヒントです。
③ 神経痛(例:三叉神経痛)
顔の神経が過敏になって、歯が痛いように錯覚することがあります。特徴的なのは、電気が走るような鋭い痛みが短時間出ること。歯科よりも神経内科などが関わる領域になる場合があります。
関連痛は自己判断が難しいので、「歯科で原因が見つからない」「痛む場所が毎回変わる」などのときは、歯科と耳鼻科・内科などの連携で原因を探すことになります。
- すぐ受診したほうがいい危険サイン
歯の痛みの中には、我慢していると悪化しやすいものがあります。次の症状がある場合は、早めの受診が安全です。
- 顔や歯ぐきが腫れてきた
- 発熱がある/だるい
- 膿が出る、口の中が変な味がする
- 何もしなくても強い痛みが続く
- 口が開けにくい、飲み込みにくい
- 痛み止めが効かない/効いてもすぐ戻る
特に腫れや発熱がある場合、炎症が広がっている可能性があり、放置はリスクになります。
- 応急処置:受診までにできること・避けたいこと
痛みがあるときは、原因治療が第一ですが、受診までの間にできることもあります。
できること
- 頬側から軽く冷やす(冷やしすぎはNG)
腫れやズキズキが強いときに楽になることがあります。 - 鎮痛薬を用法用量通りに使う
我慢しすぎて睡眠不足になると、痛みが増幅しやすいです。 - 柔らかい食事にする/痛い側で噛まない
- 口の中を清潔に保つ
歯みがきやうがいで汚れを減らす(腫れて触ると痛い時は優しく)。
避けたいこと
- 温める(長風呂、熱い飲み物で温める)
炎症が強いと悪化することがあります。 - 患部を指や爪楊枝でいじる
- アルコール摂取(血流が増えて痛みが強まることがある)
- 痛い歯で硬いものを噛む
痛み止めはあくまで「一時的に痛みを抑える」だけで、原因が消えるわけではありません。落ち着いたら、できるだけ早めに原因を特定するのが近道です。
- 予防:痛みを繰り返さないために
歯の痛みは、一度治っても生活習慣次第で繰り返すことがあります。再発を減らすポイントはシンプルです。
- 定期検診(小さなむし歯・歯周病を早期発見)
- フロス(糸ようじ)習慣
歯ブラシだけでは落ちにくい歯間の汚れが、むし歯・歯周病の温床になります。 - ブラッシング圧を弱める
強すぎる磨き方は歯ぐきを下げ、知覚過敏の原因にもなります。 - ダラダラ食べ・甘い飲み物を減らす
口の中が酸性になる時間が長いほど、むし歯リスクが上がります。 - 歯ぎしり対策
必要ならナイトガード、日中の食いしばり癖の自覚(上下の歯は普段は接触しないのが正常)も重要です。
- まとめ
歯の痛みの原因は、むし歯だけではありません。歯周病、ヒビ、親知らず、噛み合わせ、さらには副鼻腔炎など「歯以外」が原因になることもあります。だからこそ、痛み方(しみる・ズキズキ・噛むと痛い)は大事なヒントになります。
ただし、最終的な原因特定は自己判断が難しく、放置すると治療が大がかりになりやすいのも歯のトラブルの特徴です。
「痛みが続く」「悪化している」「腫れがある」などの場合は、早めの受診をお勧めします。
当院でも随時救急対応していますので、一度ご連絡ください。
電話番号は06-6395-4618
